シニアの本棚⑤森村誠一著「老いる意味」病や悩みにも寄り添う。「私の老人性うつ病との闘い」

我々がシニア世代に突入したときの課題は、金銭リスクと健康リスクにどう立ち向かうかですが、もう一つ厄介なのは「認知症」と「老人性うつ病」です。

この本は森村さんが、正面から「老い」について、しかも誰もが発表を避けがちな「老人性うつ病」について、第1章から、「私の老人性うつ病との闘い」が書かれています。

老人性うつ病から生還された方の、それも伝えることが職業でもある人のとても貴重なレポートだと思い、すぐに購入して読みふけりました。偉大な作家でも医者に頼るしかないのか。うつ病だけでなく忍び寄る認知症とのことも語ってくれています。

「その日、朝がどんよりと濁っていた」

20ページから引用します。

「その日の朝はいつもと違った。

今日も充実した時間を過ごせるだろうと思っていた早朝、いつものようにベランダに出て、爽やかな空気を吸いながら身体を動かそうとしたとき、違和感を覚えた。

前日までとはまったく違ったように、朝がどんよりと濁っていたのである。雲が多いとか、そうしたことではなかった。仕事に疲れたのかなと思い、毎朝欠かさなかった朝の散歩をやめて寝床に戻った。

眠ることはできた。いつもより休めたはずなのに、眠気が残っていた。しかし、その日から爽やかな朝に出合えなくなったのである。朝の散歩をしていても、車の排ガスがひときわ濃厚に自分を包んできた。

私の身に何かがある。大学病院に診察に行くと老人性うつ病と認知症の合併を疑われることになった。」

➳こうしてある日突然に、森村さんは老人性うつ病を発症、2015年の82歳の時のことでした。それから3年に渡り、「ひどかった時は、何も食べられず、体重は30キロ台にまで落ちた」と、うつとの闘病記が綴られていきます。以下、第1章の小見出しを列挙します。

  • 言葉が、文章が、汚れきっていた
  • うつによって生活のすべてが暗くなった
  • うつ状態を脱するための四か条
  • 書けなくなった作家は「化石」である
  • 脳からこぼれた言葉を拾っていく
  • 社会から置き去りにされた長い時間
  • 私は「元の人間」に戻れるのでしょうか?
  • 医師にすがるしかなかった日々
  • いつもの朝が戻ってきた……
  • 新たな試み「終点のない夢」
  • 「道」が続いている限り歩みは止めない
  • まだ、頑張れるじゃないか

うつに苦しまないために、「老い」をプラスに考えることも大切

➳老人性うつ病から生還されただけに、うつ病にならないためのアドバイスには、重みが感じられます。ぜひともこれらのアドバイスを心がけ、実行した思います。第4章 老人は、健康に寄り添う 183ページより引用。

「私自身、老人性うつ病になってしまったわけだが、そういう人は増えていると医師から聞いた。原因はさまざまだが、自分が老いていくことのストレスも原因になるようだ。

うつになったとき、まずわかりやすく見られる特徴は、朝、気分がふさぐことである。特別な不服はないはずなのに、朝から憂うつな気分になっている。

老人性うつ病の場合は、薬が合えば治りやすいので、異変が感じられたときには早めに病院に行くのがいい。

ひとりで抱え込んではしまわないことである。

老いから生じるストレスを解消させるためにも家に閉じこもらないこと。そのためにも散歩を日課にしたり、外で誰かとともに行う趣味を持っておくのがいい。」

もう一つアドバイスを引用します。 小見出しに 「老い」をプラスに考えることも大切

「うつ病のケアは、無気力な状態に入る前に始められるといい。ボーダーラインを越えてしまうと、ひとの言うことを聞かなくなって、無気力状態をどんどんひどくすることになるからだ。  (中略)

「自分の身に老いが訪れていることについては深刻に考えないほうがいい。そのストレスがうつ病を招いてしまうケースもある。

老いて先が見えてきたこともマイナスではなくプラスに受け止めたい。想定外の事態が起きたとしても「限られた時間の範囲内のこと」に過ぎないのである。

これから何があるのか……などとは恐れず、大胆に現在を楽しめばいい

そういう姿勢を持っていればうつを遠ざけられ、うつになっても早めに克服できるのではないかと思う。」

終着駅ではなく「第二の始発駅」に立っている

森村さんの「シニアの時間」の捉え方は、「新章」です。それは、人生をリセットできるし、人は変化できるからと言います。とても共感します。 第5章の 老人は明日に向かって夢を見る  197ページから引用。

考え方を変えてみてはどうか。身体が老いても病を経験しても、心は老いてしまうわけではない。

老いを恐れず、残された日々を自然体でいること。良いことも悪いこともすべて過去の出来事として水に流す。今までのことはリセットして、ゼロから始まると考える。

続編やエピローグのつもりでいるのではなく「新章」にすればいい。人間はいくつになっても新しいことを始められる。少しだけの勇気があれば、夢は必ず叶うのである。

➳老人性うつ病を乗り切られただけに、ポジティブな言葉にも説得力を感じます。 ぜひご一読を。

ブログランキングに参加しています。
下のバナーを「ぽちっ」と押して、応援していただけると嬉しいです。

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ
にほんブログ村

にほんブログ村 ライフスタイルブログ ポジティブな暮らしへ
にほんブログ村

※各製品リンクURLはアソシエイトプログラムを­使用しています

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。