定年前は子供のために、家族のために収入の大半を使ってきました。自分のために使うというのは、スーツ・靴・シャツ・ネクタイなどの必須のものと、少しの娯楽に費やせる「お小遣い」でした。ボーナスで予定していたゴルフのドライバーの購入予算は、子供の臨時の夏期講習費用に消えたりしました。
仕事では、新たな収入を獲得するために投資を行い経費をつぎ込み、価値を生み出し、利益を得るというビジネスを回しているのに、源泉徴収と社会保険料の天引きによる手取り給与には、自己への投資や積極的な経費の運用は欠落していました。特にボクは経済観念が低くて、あてがい扶持を増やすにはひたすら昇進昇格・出世という手段での給与の増額しか頭にありませんでした。
ところが定年後、嘱託で仕事をすることになり、嘱託社員雇用ではなく業務委託契約者を選んだときに、景色が一転しました。1年間お世話になったその会社で提示された報酬は、年額600万円でした。月額50万円ですが、嘱託社員の給与なら手取りは35万円ほどでしょう。ところが業務委託業者として毎月50万円を請求すると、消費税分が加算され52万5千円が振り込まれたのでした。もちろん税金や社会保険料などの支払い分がインクルーズサれているのですが、大きく異なったのが、経費でした。
定年前から単身赴任で東京に住居を借りていて、定年後も東京と関西との2拠点暮らしを継続したため、大きな支出項目として(1)家賃・光熱費(2)関西の実家と行き来する新幹線費用の、2つが手取りは35万円から出費するのか、売上額52万5千円から経費として支出するのか。天と地ほどの開きでした(笑)
しかも、定年後の新しい働き方を模索しなければならない身にとって、勉強会や講習費用、さらに人との交流に要する交際費や会議費が経費参入できるというのは、ボクにとって驚き以外に何者でもありませんでした。
定年後は、背中に背負う荷物をあらかた降ろし終えて、身軽になっているはずです。人によって差はあるでしょうが、子供たちは独立し、親の介護も終わり、家のローンも早い人は完済しています。収入は少なくても支出も少なくて済みます。
ですが、被雇用者を継続すれば、縮小均衡を余儀なくされていきます。再雇用・再就職で発展性のない、肩身の狭い働き方に加えて、支出面の自由度を放棄することになりがちです。
個人事業主を選べば、自分のための投資を最大化することができます。積極的に、自分のために使う醍醐味が待っているのです。確定申告でたくさんのことを学びました。