孤独とは、心の回転は上げつつ減速して生きること。
➳五木さんは、この本のタイトルのように、「孤独」こそシニアの友であり、幸せに過ごす生き方だと言います。だからまず、世間の言う「前向きに」の呪縛を捨てることから始めようと。
「老年期の1番の問題は生きる力が萎えることです生きていこうとする気力さえ萎えてしまう(中略)シフトダウンして生きる。スピードは落としてもトルクは落とさない。加齢とともに社会生活や身体的行動は減速しても心のトルクは高まっていく。孤独とはそんな生き方の1つではないかと考えたのでした。回転をあげつつ減速して生きる。」
この本の目次をご紹介すると、
- はじめに
- 第1章 「老い」とは何ですか
- 第2章 「下山」の醍醐味
- 第3章 老人と回想力
- 第4章 「世代」から「階級」へ
- 第5章 なぜ不安になるのか
- 第6章 まず「気づく」こと
- おわりに 「回想」が人間不信と自己嫌悪を癒やしてくれる
体の不具合は、「治す」のではなく、「治める」こと。
作家らしい言葉のこだわりや使い方が随所にあります。
「諦める」ことが必要と言い、諦めるの本来の意味は、「明らかに究める」ことであり、目を逸らさずに、ありのままを直視する。まずそこから始まるのが第一歩、と。
なるほどと思ったのは、「体の不調に、悩まされるのが常になってきます。筋力の衰え、前立腺肥大に、腰痛、視力の低下や、歯の衰え、、、、心の持ちようで飼い慣らしていく症状もあります。何も完治しなくても良いのではないか。体の不具合を「治す」のではなく、「治める」こと。治療というより「養生」です。」
そうなんですね。何も若いときのように100%の動きでなくても、そこそこの範囲でゆっくりでも自分一人で動ければ充分なんですね。
また、こうも書いています。
「老いを自覚して、よくよく耳を澄ましてみると、誰もが自分の体がいろんな言葉を発信していることに気がつくでしょう。その「声なき声」を「身体語」と命名したのですが、それに素直に耳を傾けながら、さまざまな工夫をし、ライフスタイル全体を見直す。その結果、徐々に体調が変化し、新しい仕事にチャレンジする意欲も湧いてきたのです。」
下山にこそ人生の醍醐味がある。
人生を山登りに例えれば、人生の後半生は、下山の時期だといいます。
「山を登る時、目の前に見えるのは例えば曲がりくねった登山道です。胸突き八丁と呼ばれるような急斜面では視界に入るのはそれこそ山肌だけになります。眼前が開け目指す山頂が姿を現しても、まだ遥か先です。一本の登山道に連なる人たちの後を追って、黙々とそこに向かって歩を進め進めなければならない。
翻って下山はどうでしょう、眼下には歩いてきた道ばかりでなく、その周囲の山々も遠く外界まで見渡せる大パノラマが広がっているはず。場合によっては中心を川が流れる平野やその川が注ぎ込む海までの遠景を目にすることができるはずです。
下り道では、登るのが精一杯だったときには振り返ってみる余裕もなかった景色が、広々と目の前に展開しているのです。足下の高山植物に気づいたり、低木の茂みから飛び出した雷鳥に驚かされたりするというのも、下山の楽しみに感じられる。」
頂上を目指して登りきったら、そこで登山の目的を達したと思い、山を下りる時は上りの付け足しのように捉え、さしたる思い入れもなく足早にこなすだけ。まさに人生の後半期を消化試合のように意味を見出すことを放棄しているのですね、私たちは。
「林住期(りんじゅうき)」と「遊行期(ゆぎょうき)」
また、とても深い教えを紹介してくれています。
「古代インドのヒンズー教に生まれた概念に、人生を四つの「時期」に分ける考え方があります。人生のそれぞれの年代にはそれにふさわしい生き方役割があるという、非常に示唆に富んだ思想なのです。」
- 「学生期(がくしょうき)・・・青少年の時代。心身を鍛え、学習し生きるために必要な様々な経験を積んでいく
- 「家住期(かじゅうき)・・・社会に出て働き、結婚し家庭を作って子供を育てる。俗にいう「働きざかり」
- 「林住期(りんじゅうき)・・・実社会からリタイヤし、家も家族も捨てて、文字通り独り林に住む
- 「遊行期(ゆぎょうき)・・・林さえも離れ、定住地を持たずに、見一文になってガンジスの木に向かって放浪する
➳宗教の悟りに向かう教えを、私たちがたやすく受け入れるのは難しいですが、人が生まれ育ち、教えを受け学び、社会に貢献して、そしてその先には、荷物を下ろし自分に向き合っていく「時期」が待っているというのは深く納得をさせられます。
五木さんの本は、押しつけがなく自分もまた悩み迷っているんだというスタンスで話しかけてくる、読みながら立ち止まり考えることを提供してくれます。
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